整備不良の車と聞くとマフラーからの爆音であったり、大きなリヤウイングがついていてタイヤがハの字になっていて派手なカラーリングで….なんて想像する人は昭和生まれの方ではないでしょうか?
まだ一部地方にはそんな車を見かけることもありますが、一昔前に比べるとかなり減少しました。
厳密に言うとそんな車は不正改造という違反となり、違反の種類としては別になってしまうのですが、「自分はそんな改造もしないしきちんと車検も問題なく通ってるよ。」と思っている方、そんなあなたでも明日整備不良として切符を切られてしまうかもしれません。
整備不良とはどんな車があてはまるのか?
また、違反したときの罰金や違反点数はどうなっているのか?
そんな以外と知られていないことについてこれからご紹介していきたいと思います。
整備不良の内容は?
整備不良違反というのは普段車に乗っていても自分では気がつかないことが多くありますよね。
最も多いものがライトなどの電球切れですね。
ヘッドライトなんかは夜走行していれば「ちょっとくらいな」とか信号待ちなどで前にいる車の反射で切れていることが確認できたりします。
また、ウインカーの球切れの場合にもウインカー点灯したときに普段より点滅が早くなっていれば、どれかが球切れしているということが分かります。
それ以外の球切れは車から降りて自分で確認するか、他人が気づいて教えてくれないと知らないまま走行することになります。
実際道路を走っていても、テールランプやナンバー灯などが切れたまま走行している車を見たことがあると思います。
そういう時警察官がその車を見つければ確実に止められます。
「これからすぐガソリンスタンドなどで修理します」などと言って、警告で見逃してくれる警察官であればいいのですが、その場で違反切符切られる可能性も多くあります。
違反切符切られることは当然のことなのですが、言われるまで知らなかったことで点数の減点と反則金を支払うことになるので納得いかないことが多いですが、もう時すでに遅し。
整備不良の違反例としては灯火類のパターンが一番多くなりますが、違反の種類は灯火類だけでなく、2つの違反内容があるのでご紹介します。
■整備不良(尾灯等)
これが整備不良として一番多い違反内容で(尾灯等)となっていますが、テールランプはもちろん、バックランプ、ナンバー灯、ウインカー、ヘッドライトなど灯火類全般となっています。
球切れに限らずテールランプやウインカーなどの灯火類やライトのカバーなどは保安基準で色やヒビ、又は破損がないかなどの細かい決まりがたくさんあります。
なので、誰も付けていないからと適用外の色にしてしまうと取締りの対象になり車検も通らず余計な費用をかけて元に戻すことになってしまいます。
■整備不良(制御装置等)
これはあまり聞きなれず違反切符を切られたということは聞いたことないかと思いますが、制御装置等の整備不良でも違反の可能性はあります。
制御装置というとブレーキ関係になるのですが、自分でブレーキパッドなどを交換する人はほとんどいないと思います。
では、どういうことが該当するのかというと車検や点検に出した際にブレーキパッドがないのを知りながら交換せず、走行中にブレーキパッドがないことが原因で事故が起こった時などが該当します。
タイヤも制御装置等の”等”の部分に含まれるのですが、タイヤのスリップライン(タイヤには保安基準で溝の最低深さが決まっていて、スリップラインと呼ばれる印が数箇所付いています。)を超えているのを知りながら使用しバーストして事故が起こった時などです。
タイヤに関してもう一つ言えば、スタッドレスタイヤを履いている際、スタッドレスタイヤにはスリップラインの他に、プラットフォームと呼ばれる雪道を安全に走行できる溝の深さの限界を示した印があるのですが、このプラットフォームを越えて雪道を運転中事故を起こせば、事故の原因の一つとして取り上げられてしまいます。
ブレーキパッドの場合もタイヤの場合も直接、制御装置等の整備不良として違反切符を切られることは少ないと思いますが、事故の過失として保険等で不利になることは間違いないです。
以上、整備不良とは足回りと灯火類が主な内容となっているのですが、この違反による罰金とそうならない為にはどうすれば良いのでしょうか?
整備不良の罰金と対処方法
違反には罰金が付きものですが、上記で紹介した2つの違反内容はそれぞれ罰金の金額が違います。
まず灯火類が不備の「整備不良(尾灯等)」ですが、こちらの違反金は普通車で7,000円となっています。
灯火類は切れていることが分かりにくく、もし分かったとしても運転するのに大きな支障が無い為、「次の休みの時に換えよう。」などと先延ばしにしがちな傾向にありますが、もしその間に整備不良として違反切符切られてしまえば、テールランプの球交換だけだと数百円で終わるのが、罰金7,000円払ってさらに交換費用がかかるというバカらしい事態になってしまいます。
警察官もランプが片方切れていただけですぐ切符を切ることは少ないと思いますが(左右両方とも切れていればすぐ違反切符になります)、注意だけで見過ごしてもらったり、他人に指摘されたりして気づいた時にはすぐ交換するようにしましょう。
次に「整備不良(制御装置等)」ですが、こちらの違反金は普通車で9,000円となっています。
これは主にブレーキ関係の整備不良ですが、ブレーキ関係に不具合ある車なんて聞いただけでも恐ろしいことですし、そんな車が公道を走れば事故を起こすことは目に見えています。
そういうことを考えると、逆によく違反金が9,000円で収まったなと思いませんか?
また整備不良の車というのは保安基準を満たしていないことになるので、運輸局より必要な整備を命じられ、さらに使用方法や使用するルートまで限定させられるのですが、それに従わないと対象車両の使用停止、さらに50万円以下の罰金が科せられます。
それでも使用禁止に従わずに車両を使用すると、6ヶ月以下の懲役、あるいは30万円以下の罰金が科されることもありますので十分注意しましょう。
さすがに高額の罰金や懲役になるまで無視し続ける人はいませんが、違反切符を切られないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
それはもう自分で「日常点検」するしかありません。
車検通っているからとか、通したばかりだから大丈夫ではありません。
車検はあくまでも検査のその日までに保安基準に適合しているかの検査ですし、道路運送車両法には「自動車の使用者は、自動車の点検、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。」とありますので、車検後も保安基準に適合するように自分で維持し続けないといけません。
車検を受けた次の日にブレーキの効きが悪く事故を起こしてしまい、調べてみると車検を受けた整備工場でしっかりブレーキパッドが装着されておらず、検査時まではうまく適合した数値が出ていたのに後日外れてしまったのが事故の原因だったにも関わらず、車に乗る前の日常点検をしていなかったという理由で整備工場に非はなくすべて自己負担になったという例もあります。
さすがにそこまでの例は特別ですが、毎日とまでは言いませんが定期的な点検は必要です。
では、何を点検すれば良いでしょうか?
エンジンルームではエンジンオイル・冷却水・ブレーキオイル・ウォッシャー液は見ておいたほうが良いです。
エンジンオイルは持ち手が黄色やオレンジ色になっているオイルゲージというものがついていて、一度引き抜いて布などでオイルを拭き取りもう一度差し込んで引き抜くと残量が確認できます。
ゲージには下の線に”L”、上の線に”F”となっていたり、ただ上下に印が打ってあるだけだったりしますが、その上下の印の間にオイルの残量が確認できれば大丈夫です。
冷却水やブレーキオイルはそれぞれタンクに入っていて、冷却水のタンクは比較的ボンネット開けてすぐ手元付近、ブレーキオイルは運転席側の奥に設置してあることが多いです。
このタンクも同様に上下に”LOW”と”FULL”の線が付いています。
分からない人はプロに教えてもらってくださいね。
次にタイヤと灯火類の点検です。
タイヤは空気は入っているか?ひび割れはないか?溝はあるか?釘などの異物は刺さっていないかを目で確認してください。
灯火類は実際点灯して確認するのですが、一人で確認する場合は壁やガラスに写すなどして前後を確認すると楽に出来ます。
あとはブレーキの踏みしろやサイドブレーキの引きしろ、エンジン始動時の異音などとあるのですが、ここまでくるとそれなりの知識が必要となりますので、せめてオイルや冷却水、タイヤの空気圧とライト類は点検できるようになったほうが良いです。
ここまで罰金と対処法についてお話しましたが、罰金とセットで付いてくるのに違反点数がありますがそちらもご説明します。
整備不良の違反点数
違反点数も罰金同様、違反した内容によって変わります。
「整備不良(尾灯等)」では普通車で罰金7,000円に対して1点の減点。
「整備不良(制御装置等)」では普通車で罰金9,000円に対して2点の減点となっています。
点数だけ見ればたいしたことないように見えますが、以前より点数を積み重ねている人や、ゴールド免許の人などもそうですが、やはり罰金と点数は痛いものですし、自分の注意でじゅうぶん防げることですので、違反切符もらわないように気を引き締めていきましょう。
では最後に罰金や違反点数よりももっと怖い整備不良の車を運転していて事故を起こしてしまった場合にどうなるのかをお話したいと思います。
■整備不良の車を運転して事故を起こした場合の責任
道路交通法では整備不良の自動車を運転することは禁じられています。
整備不良の自動車を運転させ、又は運転した場合には罰則の適用があります。
故意に行った場合には三月以下の懲役又は五万円以下の罰金、過失で行った場合でも十万円以下の罰金が科されることになります。
それは運転者だけでなく、自動車の所有者、整備の担当者までに責任が課せられる可能性があります。
また、整備不良の自動車で事故を起こしてしまった場合も同様で、運転者や自動車の所有者および整備担当者までに責任が課せられる可能性があります。
その自動車が社用車であった場合は、会社内に整備士や社用車の管理者がいれば、それぞれ整備不良と管理不備ということで処罰の対象となります。
もし、専門の役職がいなければ会社法人や会社の代表者が処罰対象となります。
※民事責任
整備不良が原因で交通事故が生じた場合で過失があると認められた場合には、事故により生じた損害を賠償する責任は整備義務を怠った者に生じることになります。
整備不良の車両を運転してはならないという義務は運転者のみが負っているものではないため、整備不良の過失と事故及び損害の発生との間に相当因果関係が認められれば、運転者だけではなく、自動車の使用者や整備担当者にも責任が認められる可能性があります。
交通事故の多くは自動車の整備不良だけが原因で起こったということよりも、整備不良に加えて運転者の運転方法や注意義務違反等を併せて過失とすることが多く、その場合には運転者は当然責任を負うことになるし、社用車の場合も会社側が責任を免れる事情がない限り使用責任や運行併用者責任を負うことになります。
また、相手側の自動車にも整備不良が見られ、事故や損害に一部関与していると見られた場合は過失相殺される場合があります。
※刑事責任
整備不良の自動車を運転していて事故の有無がなくても道路交通法62条違反の罰則が適用されますが、もし整備不良が原因で他人を巻き込んだ事故が起こり、死亡または怪我を負わせてしまった場合、運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致死傷罪が成立する可能性が高くなります。
事故が起きたからといってすぐ成立するわけではないですが、整備不良が主な原因で運転者も認識していた、あるいは認識できたのに運転し続け、それによって他社を死傷させてしまったということが検証されると過失運転致死傷罪の成立が高くなります。
また、その車が社用車で会社側も整備不良を知りながら業務の為と運転させていたことが分かれば共犯とされる場合があります。
過失運転致死傷罪は被害者の損害の程度が軽ければ成立しないこともありますが、もし成立してしまうと七年以下の懲役もしくは禁錮又は百万円以下の罰金という重い罪の適用があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
たかがライトだからと修理を後回しにしていたり日頃の点検を怠ってしまえば、整備不良として違反切符を切られるどころか事故を起こせば保険の減額などいろいろなところで影響が出てくるかもしれません。
それがタイヤの空気圧が低かったり、まったく溝がないことが原因で人身事故を起こしてしまえば過失運転致死傷罪という非常に重い罪まで負ってしまう可能性があります。
車に乗るときは毎回点検することが義務付けられていますが、毎日点検することはとても難しいことなので、ガソリンスタンドに行き燃料をいれるついでにちょっと見てもらうとか、オイル交換に行った際についでに見てもらうとか、プロに見てもらうタイミングもどこかにあるはずなのでこまめな点検を意識するようにしていきましょう。
自分の愛車がいつもベストな状態だと消耗品も長持ちしますし、何よりも長く乗り続けられますのでこれからも安心安全なカーライフを送ってくださいね。