日本には1年間通して季節によって様々なイベントがありますが、12月は特に忘年会やクリスマスなどお酒を飲む機会が多くなると思います。
お酒を飲む機会が多くなるとそれに比例するように飲酒運転も増えています。
「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」
この言葉は昔から言われていることですが、いまだに飲んでも乗る人は多くいます。
お酒を飲んで気分良くなることはいい事ですが、ルールはしっかり守って周りに迷惑をかけない努力は最低限しないといけません。
ましてや飲酒運転なんてもってのほかです。
今までもいろんな所で聞いてきたと思いますが、あらためてお酒と車についての時間や基準、罰則について確認してみましょうね。
人生を棒に振る前に!!
飲酒運転の時間
飲酒運転の危険性や悲惨な事故は毎年のように取り上げられていて、取締りや罰則も強化されているにも関わらず、なぜ飲酒運転というのはなくならないのでしょうか?
飲酒運転をする人は大きく分けて3種類のタイプに分かれます。
①取り締まりに遭わず事故起こさなければいいと思って運転するタイプ
②飲酒によって気が大きくなって運転するタイプ
③お酒と運転が切り離せないタイプ
まず①のタイプは「取り締まりする場所は知っているから別のルートなら大丈夫」とか勝手な判断で運転する人が多く。
②のタイプは「酔っていないから自分が事故起こすことはない」など自信過剰な判断をする人が多く。
③のタイプはもう問題外です。
お酒と運転が切り離せないので病気に近いと思います。
どのタイプもそうですがアルコールが体に与える影響を知らないというか甘く見ていると思います。
アルコールが心身機能に与える影響としては、「注意力が散漫になる」「周りをみる注意力の範囲が狭くなる」「速度感が狂う」「動作が乱れる」「判断が遅れる」「自己規制が緩む」「ミスに対する自覚がなくなる」など、まだまだ上げられるほど様々な影響が考えられるんですよ。
速度感が狂い注意力が低下した上に判断が遅れるなんてわざわざ事故を起こしに行っているようなものです。
そんな心身への影響を知っていたとしてもアルコールが入ることにより、それまで抑えていた考え方が麻痺し、「このくらいなら大丈夫」と気持ちに変化が出てしまうんでしょう。
普段から運転に自身ある人に多く見られますが、そういう人が特に「判断力の低下」「注意力の低下」「情報処理能力の低下」に気づきにくく事故を起こすケースが多いです。
実際の検証として飲酒運転の状態でコース内を走らせると、脱輪、スピードオーバー、信号や標識の見落とし、雑な運転、ペダルやレバーの操作ミスなどが見られました。
また、お酒は飲んだが少し寝たからもう大丈夫だろうと都合の良い判断をしてしまうことも多く見られます。
いったいどのくらい時間が経過すれば正常な運転が出来るのでしょうか?
酒が抜けるということは血中アルコール濃度が正常値になるということです。
アルコールが体内から抜ける時間(アルコール分解時間)は、自分の体重と飲んだお酒の量を元に具体的な計算方法があります。
その計算方法はまずお酒自体に含まれるアルコール含有量を計算します。
①アルコール含有量(g)の計算方法
量(㎖)×度数(%)×0.8(アルコール比重)=純アルコール含有量(g)
この計算を元にすると、ビール500ml(度数5度)で20g、日本酒1合180ml(度数15度)で21.6g、焼酎1合180ml(度数35度)で50.4gが純アルコール含有量となります。
次に1時間に分解できるアルコール量を計算します。
②1時間に分解できる純アルコール量(g)の計算方法
体重(㎏)× 0.1=1時間に分解できる純アルコール量(g)
体重が70kgの人であれば1時間で7g分解できることになります。
最後に分解時間を計算します。
③アルコールを分解する時間の計算方法
①÷②=アルコールを分解する時間
体重70kgの人がビール500mlを分解する時間は2.9時間かかります。
その日の体調や個人差は当然ありますのであくまでも目安とはなりますが、500mlの缶ビールだけでもおよそ3時間もかかり、ビール中ジョッキ1杯と焼酎1合では約10時間もかかってしまいますし。
アルコールを完全に分解することは意外と長時間かかってしまうことが分かってもらえたと思いますが、いくら次の日に仕事があり車を運転することが分かっていても誕生日パーティーなどでついつい飲みすぎてしまうことはありますよね。
そして朝起きると二日酔いなんて経験した人も多くいるのではないでしょうか。
そんな時、「昨晩遅くまで飲んでしまったけど、しっかり寝たし…..」と思ってしまう人はいませんか?
二日酔いでも飲酒運転?
アルコール分解時間からも分かるように、いくらしっかり睡眠が取れた気がしても遅くまで飲んでいたり、ましてや二日酔いで起きてもお酒が残っている状態で車を運転すればそれは飲酒運転となります。
しっかり睡眠が取れればアルコールも取れた気がしますがほんとにそうでしょうか?
睡眠というのは浅い眠りと深い眠りが交互に繰り返されることが良質な睡眠ということになるのですが、深酒をしすぎて寝てしまうと睡眠中も体はアルコールを分解しようと活発になってしまい深い眠りが出来なくなってしまいます。
浅い眠りがずっと続いてしまうと当然脳や体はしっかりと休めていないので、起きてもダルさや疲れやアルコールが残っている状態となります。
また、浅い眠りに加えアルコールにより尿意で目が覚めることにも繋がります。
二日酔いで運転するということはアルコールが残っている上に睡眠不足も重なってきますので、注意力も判断力も低下し取り返しのつかないことになりますので絶対に行わないようにしてください。
近年では二日酔いによる事故も多く、夜中に行われていた飲酒検問も朝の通勤時間に行うことも多くなりました。
早朝の飲酒検問も行う時期と場所もバラバラなので、前日のお酒を控えようと意識する人は増えると思いますが、そこまでしないと気をつけない人が多いということになりますので一人一人の意識をもっと高めていく必要があります。
では次は運転免許を持っている人であれば一度は必ず教習所で教えられる飲酒運転の基準値について整理してみたいと思います。
飲酒運転の基準
飲酒運転とは道路交通法では大きく分けて「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられています。
「酒気帯び運転」とは、呼気アルコール濃度が1リットル中0.15mg以上検出された状態です。
飲酒検問では警察官が「これにフ~っと息を吹きかけてください。」と機械を差し出された経験があると思いますが、その機械がアルコール検知器です。
アルコール検知器で0.15mg以上の反応が出れば文句なしの酒気帯び運転が確定します。
少しのアルコールにも反応する検知器があるので「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」はアルコール濃度の数値の大きさで分けられていると思いがちですがそうではありません。
数値の大きさの境界線は0.15mg~0.25mg未満と0.25mg以上とに分けられていますが、どちらも「酒気帯び運転」の中での境界線となっています。
酒気帯び運転の基準値としてよく表現されているもので「1単位」というものがあります。
この「1単位」とはどういうことかというと、上記で紹介したアルコール分解時間の計算のところで純アルコール含有量を求めるところにあるのですが、純アルコール含有量が20gで「1単位」となります。
つまり、アルコール度数5度のビール500mlやアルコール度数25度の焼酎110ml(0.6合)程度が1単位に当たることになります。
1単位の血中アルコール濃度は0.02~0.04%で、これを呼気1リットル当たりのアルコール量に換算すると0.1mg~0.2mgに相当します。
そのことから分かるようにお酒を飲んで1単位に達してしまった時点で「酒気帯び運転」の基準値を越えることになります。
では、「酒酔い運転」はどうやって処罰が決まっているのでしょうか?
それは警察官の判断となります。判断基準はアルコールの濃度に関わらず、まっすぐ歩けなかったり言葉のやり取りがうまく出来ないことなどによって決定されます。
なのでお酒に弱くて少しの量でも酔って千鳥足になったりする人は、たとえ基準値以下だったとしても酒酔い運転として検挙される可能性があります。
酒酔い運転の恐れがあると判断されれば白線の上を歩かせられ、白線からはみ出した時点で決定されたりします。
もちろん「酒気帯び運転」より「酒酔い運転」の方が重い罰則になるのですが、どういう罰則があるのかを次でご紹介してみたいと思います。
飲酒運転の罰則
「酒気帯び運転」も「酒酔い運転」もどちらも重い罰則となるのですが、一つ一つ見ていきましょう。
まず「酒気帯び運転」の罰則ですが、1リットル中の呼気アルコールの濃度によって2種類に分かれます。
呼気アルコール濃度が0.15ml〜0.25ml未満の場合、状態としてはお酒に酔ってはいないが体内にアルコールがある状況になりますが、その時の罰則は、減点13点・免許停止・免許停止期間90日・3年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。
呼気アルコール濃度が0.25ml以上の場合、状態はお酒に酔ってはいないが体内にアルコールが残っている状況に変わりはないが、減点25点・免許取り消し・免許取り消し期間2年間・3年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。
酒酔い運転の場合は、呼気アルコール濃度の設定された基準はなく、状態としては言語がおかしかったりまっすぐ歩けないなど明らかに酔っていると判断出来る状況で、罰則は減点35点・免許取り消し・免許取り消し期間3年間・3年以下の懲役、または100万円以下の罰金となります。
また、罰則は運転者のみにならず「車を提供した人」「お酒を提供した人」「車に同乗していた人」も対象になります。
「車を提供した人」の罰則は、運転者が酒酔い運転だった場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。
そして、運転者が酒気帯び運転だった場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
「お酒を提供した人」と「車に同情していた人」は同じ罰則になるのですが、運転者が酒酔い運転だった場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。
運転者が酒気帯び運転だった場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。
飲酒運転による罰則は1970年から始まりましたが(道路交通法が制定されたのは1960年)、当時の飲酒運転の罰則はというと、酒酔い運転が違反点数15点で2年以下の懲役または10万円以下の罰金、酒気帯び運転が違反点数6点で3月以下の懲役または5万円以下の罰金だったものが、現在の罰則まで引き上げられたのは繰り返される飲酒運転とそれによる悲惨な事故が原因だということはいうまでもありません。
いくら罰則が強化されようとも悲惨な事故のニュースを見ようとも繰り返されることには、基本的なことを忘れ、一度飲酒運転をして何事もなかったことによって意識が薄れてきて抵抗力がなくなってくることにあると思います。
毎年事故は起こり社会全体で飲酒運転撲滅運動は強化されていますが、最終的な判断は自分自身でしか決めることは出来ません。
現在トラック、バス、タクシーなど、運輸・交通関連の全事業者は必ずアルコール検知器を設備として事業所に備え、点呼時の酒気帯び確認にこれらを使用しなければならいという規則があります。
車を運転するプロドライバーはもちろん飲酒運転は御法度のはずなのですが、「飲酒運転ゼロ」にはなっていません・・・
そこで注目されているのが「アルコール・インターロック」という装置です。
どういうものかというと、運転者がこの装置に息を吹きかけると体内のアルコール濃度が計測され、基準値を越えると車がロックされる、つまりエンジンがかからないという仕組みになっています。
この装置は日本での導入はまだまだ少ないものの(運送会社では多くの事業者が導入してます)、海外ではかなり広まっており公務用車両、児童を学校に送迎するためのバス、一般乗客が乗り合うバス等の運転者は、インターロックの検査をパスしなければ、車両を運行できない制度が採用されつつあります。
しかし、他人の呼気により解除されてしまう可能性やインターロックの装着には高額の費用がかかるため一般ドライバーに採用されないなど問題もありますが、もし、このインターロックの装置が車両に標準装備され、他人に解除されないようにモニターで判別出来ることが可能になれば飲酒運転ゼロが見えてくるのではないかと期待することが出来ますね。
まとめ
みんなでお酒を飲むことはとても楽しいことですが、その楽しい中にもルールはあり、
「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」
は鉄則の決まり事です。
このことは自分自身で気をつけることはもちろん、周りの人も協力し一人一人の意識が一番重要になります。
そして飲んだ次の日のことも忘れず、お酒の量を抑えるとか早めに切り上げることや朝の出勤に車を使わないなどの努力をするように心がけてください。
車は便利な乗り物ですが時にはとてつもない凶器になります。
そういう乗り物だということを忘れず、自分の技術を過信しすぎず安全に運転することが運転者に課せられた責任になります。