寒冷地仕様車と聞いてどれくらいの人が説明できるでしょうか?
もちろん北海道に住んでいる方や毎年冬の寒さが厳しく積雪量も多い方は説明できる人が大半ではないかと思いますが?
そうではない方たちはほとんど馴染みがなく、あまり気にしたことはないので「寒い地域用の車……」程度ではないかと思います。
でも、まったく関係ないことでもありませんよ?
転勤で寒冷地に長期滞在になったりとかスキーやスノーボードなどでよく雪山に行ったりとか、まったく他人事という話でもないので、寒いところに行った場合、車はどういう状態になりどんな不具合が発生するのかを、知っておいたほうが良いと思います。
いざ寒冷地に向かったはいいが、不具合が起きて車が止まってしまったということがないように何が違うのか?どういうことに注意したほうがいいのか?
を踏まえ、寒冷地仕様車を知っていきましょう。
寒冷地仕様車って何?
寒冷地とはもちろん冬の寒さが厳しく-20度以下になったり豪雪になったりする場所ですが、日本では北海道を始め、東北地方、北陸・甲信越地方や日本海側の積雪が多くなる地域にあたります。
寒い日はエンジンがかかりにくかったりフロントガラスが凍ってしまって、まったく見えないという経験はあると思います。
そういう寒い時期特有の様々な問題を解決するべく寒冷地仕様車があります。
寒冷地仕様だからといって雪が降り積もった道路を走るためにスノーモービルのようにタイヤがスキー板のようなものに変化するわけではなく(そういうのがあればみてみたいですが…..)
通常の車にオプション装備を付けていくこととなりメーカーごとにオプションも変わってきます。
北海道では「北海道地区メーカー希望小売価格」があるほど寒冷地仕様車が標準化されており価格も通常より上乗せした状態で販売されています。
ドイツ車などヨーロッパメーカーの本国仕様は寒冷地仕様に近いのがほとんどで、一昔前まではラジエーターのサイズが小さいため夏場にオーバーヒートするなんてことがありましたが現在ではそんなことはなくなりました。
一方、国産メーカーではホンダ・マツダには元々寒冷地仕様というのが存在せず、全国どこでも同じ価格で販売されていますが寒冷地でも問題なく走れるように設計されています。
では、普通車と寒冷地仕様車は何が違うのか?
普通の車と違うの?
寒い場所や雪が降っているところに車を
止めておけば車が受けるダメージは大きくなるし
走行していても思いもよらないところから不具合が発生してきます。
その問題を軽減するため、不具合の防止とパーツの補強によって普通の車と違うところが各所にみられます。
●普通車との違い1 バッテリーの大容量化
常温に比べ低温の状態が長く続けばバッテリーの容量が低下してきます。
それによってエンジンがかかりにくくなったり
場合によってはバッテリーが上がってしまったなんてことがあります。
特にヒータ類を多く使用することが多いので
通常のバッテリーではバッテリー上がりの原因になったり寿命が短くなります。
寒冷地仕様の場合は容量は大きくなっているのですが
普通車の場合で「55D23R」というバッテリーが付いていたとすれば
「85D23R」に容量をあげたほうが良いです。
Dより前の「55」という部分が容量となるのでそこの数字を大きくしてください。
ちなみに容量が大きくなれば価格も大きくなりますので……。
●普通車との違い2 オルタネーターの大容量化
オルタネーターとは車の発電機の役割をするものになるのですが
電気を多く使用するためバッテリーの容量を大きくしたので
発電量も増やさないといけません。
ちなみに、キャンピングカーも多くの電化製品を使いますのでオルタネーターの容量を大きくしています。
●普通車との違い3 セルモーターの強化
セルモーターとは別名スターターモーターとも言い
キーを回したとき「キュルキュルキュル….」というもので
エンジンを始動させるため最初に動き始めるのですが
エンジンがかかりやすくなるように強化されています。
●普通車との違い4 ワイパーの強化
視界確保にはワイパーは重要ですが
通常のワイパーゴムは寒さにさらされるとゴムが硬化してふき取り出来なくなるので特殊なゴムを使ってあり
ワイパーブレードも雪に強くなるように全体がゴムで覆われたものが装着されています。
また、重い雪が払えるようにワイパーモーターの強化がされていたり
融雪用でワイパーの停止位置に熱線が入っているケースもあります。
●普通車との違い5 リアデフォッガーの強
リアデフォッガーとはリアウインドウにオレンジ色の線が数本入っている車をみたことがあると思いますが
それがリアデフォッガーで、オレンジの線はガラスに貼り付ける電熱線になっており
作動するとガラスを暖めることが出来てくもりが取れる仕組みになっています。
通車との違い6 冷却水の濃度変更
通常の冷却水の濃度(LLC濃度)は30%になっていて-16℃までとなっていますが
寒冷地用では50%まで濃度を高め-36℃まで対応出来るようになっています。
ですので、旅行等で行かれる時でも事前に濃度を高めておかないと
冷却水が凍結してラジエーターがパンクなんてこともありえますのでご注意ください。
●普通車との違い7 ウォッシャ-液の違い
雪道を走れば視界が悪くなりますのでウォッシャーを使う頻度が高くなるのですが
そんな時に通常の水を使ってしまえばフロントガラスで凍ってしまい余計視界が悪くなったり
タンクの中で凍って出ないなんてことが起こりますので
ウォッシャー液にも不凍液を入れたり、専用のウォッシャー液を購入しましょう。
また、ウォッシャータンクの容量が大きくなっている車もあります。
●普通車との違い8 暖房の強化
寒い時期を乗り越えるためにここは手を抜いてほしくない所ですよね。
シートヒーターやリアヒーター、ブロアモーター(エアコンの空気を送り出す扇風機のような部品)の
大型化等で車内をすばやく暖める機能が充実しています。
そしてガラスの凍結は避けることが出来ませんが
フロント・リアガラスのヒーター機能に加え、ドアミラーヒーターも装備されています。
また、従来のヒーターはエンジンの熱を利用して暖かい風を出していたのですが
ハイブリッド車はなかなかエンジンが温まりにくいのでヒーターの効きが弱くなってしまいます。
それを補助するために電気ヒーターが装備されています。
この補助機能により、ヒーターの効きを保つため頻繁にエンジンを始動させるなどの
ハイブリッド車の概念を覆すようなことはありません。
●普通車との違い9 ウェザーストリップの材質変更
ウェザーストリップとは、ドアや窓ガラスなどの隙間を埋めて雨や風等の進入を防いでいるゴムのことですが
その素材を軟質化することによってさらに密封でき
冷たい風が入ってこないことに加え、暖房の効きも良くなります。
そしてドアが凍結して張り付き開かなくなるのを防止するためスポンジを使用しているのもあります。
●普通車との違い10 サブマフラーの装備
外気が冷たいとエンジンも温まりにくいので、サブマフラー(排気熱回収器)があります。
サブマフラーとは、排気熱を利用してエンジンの暖気を補助する装備で
すばやく暖気することによって暖房の効率化、燃費悪化を抑えることが出来ます。
●普通車との違い11 リヤフォグランプの追加
雪や霧だと前方が見えにくいため
後続車にすばやく知らせるためリヤフォグランプの装備があります。
●普通車との違い12 塗装の強化
寒い場所の道路、特に橋の上は凍りやすいので凍結防止剤が撒かれています。
この凍結防止剤は塩分が非常に強いので付着するとシャーシなどがすぐに錆だらけになってしまうため
凍結防止剤の影響を受けにくい塗料が使われています。
ここまで強化箇所やパーツの補強について紹介しましたが
寒冷地仕様車だからといって紹介した装備がすべてついているわけではないので
どんな装備があるのかは販売店の営業マンにお尋ねください。
では次に、素朴な疑問として寒冷地仕様車で海沿いの道路を走行してもいいの?
とありましたのでお答えします。
寒冷地仕様車は海沿いの地域でも大丈夫?
最初のほうでお話しましたが寒冷地仕様車とは普通車に補強パーツをつけたり強化しているだけなので北海道を走ろうが沖縄を走ろうが問題ありません。
そして凍結防止剤対策として特殊な塗装が施されており塩害対策はバッチリですので、海沿いの地域は普通車よりも寒冷地仕様車のほうが向いていると言えるんです!!
海風が直接当たるところの方や魚屋さんの車などは特殊塗装の上から、さらに防錆塗装して、二重で対策されているのもみられます。
まとめ
寒冷地仕様車は普通車にいろいろとオプションを付けていくのでやはり価格は高くなってきます。
しかし寒冷地はもちろん、他の地域でも凍結防止対策やヒーターの充実などの装備は便利だし
忙しい朝でもすばやく車を走らせることができます。
時間と安全をオプションで補うので価格以上のお得はあると思います。
いままで寒冷地仕様車について知らなかった方も、すこしは関心持っていただけたのではないでしょうか?
いろんな装備をつけて冬の厳しい条件を乗り越えることも大事ですが
一番大事なのは雪道を走るための技術や、急ブレーキ・急発進をしないことですので
自分の運転に過信しすぎず安全運転で冬の走行を楽しんでください。